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2026.09.13

Gemini 3.5 Transcribeの使い方:1分音声でverbatimとsmartを比べる

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会議や商談の録音を、いきなり正式な議事録へ変えたいわけではない。まず「この音声は文字起こしの下書きにできるか」を、小さく判断したい。そんな最初の1件に向くよう、Gemini 3.5 Transcribeの仕様と試し方をまとめます。

先に結論を言うと、最初は非機密または合成した日本語音声を1分だけ使います。同じ音声をverbatimとsmartで別々に試し、原音と照合するまでは下書きのままにします。人名、金額、日付、話者、決定事項、次の行動のどれかが確認できなければ、正式記録や外部連絡へ進めません。

ここでいう「1分・同一音声の2モード比較」は、Googleが定めた必須手順ではなく、本稿の編集提案です。公式仕様を、小さな業務判断へ翻訳するための枠組みとして読んでください。

Gemini 3.5 Transcribeは何をするモデルか

Googleのリリースノートでは、Gemini 3.5 Transcribeが2026年8月26日にGA(一般提供開始)となり、非ストリーミングの音声文字起こしモデルとして説明されています。リアルタイムのストリーミング向けGemini 3.5 Transcribe Liveとは、モデルIDも使う場面も別です。ここを一つの「議事録機能」として扱わないのが最初のポイントです。

モデルページで示されているモデルIDはgemini-3.5-transcribe。入力は音声、出力はテキストと単語アノテーションです。通常の音声ファイルは1リクエスト最大1時間、話者分離または単語単位のタイムスタンプを有効にした場合は最大30分と記載されています。対応言語には日本語のja-JPが含まれます。

これは「日本語音声が対象に含まれる」という仕様の話です。方言、雑音、固有名詞を含む録音の認識結果や、業務でそのまま使えることを保証する話ではありません。

Google Meetの会議メモや電話要約サービスとの違いは、機能・料金を横並びにすることではなく、まず扱う層が違うと捉えると安全です。本稿が扱うのは、音声ファイルを文字へ変換するモデルのモード選択と照合手順。会議の記録機能や電話サービスの提供条件は別資料で確認すべき領域です。

使う前に確認する3条件

AI Studioの画面が出たからといって、すぐ録音をアップロードしません。次の3つを説明できるかを先に確認します。

確認すること 具体的に見るところ ここで止める条件
対象環境 公式モデルページのGoogle AI Studio導線から入り、モデル欄にgemini-3.5-transcribeが表示されるか。アカウント、地域、利用規約、音声入力の条件も確認する。 モデルが出ない、対象アカウントか分からない、条件を社内で説明できない。
料金とデータ利用 料金ページのGemini 3.5 Transcribe Standard欄では、Free Tierは入出力が無料、Paid Tierは入力2.00ドル/100万トークン、出力12.00ドル/100万トークン。音声入力とテキスト出力を合わせた推定は約0.005ドル/分と表示される。 価格、レート制限、地域、アカウント条件、データ利用・保存条件のどれかが確認できない。
音声の権利と内容 自分で作った合成音声、または利用権と同意・公開範囲が明確な音声を選ぶ。Free Tierの表示が「製品改善に使用:Yes」であることも前提にする。 個人情報、秘密、同意が不明な録音、顧客音声、権利が不明な音声が含まれる。

料金の推定値は、この記事で1分音声の実費を測った結果ではありません。料金ページの表示も変わり得ます。また、Freeなら機密音声を入れてよい、という意味にはなりません。保存期間や契約上の扱いは、利用する環境の最新表示・規約・社内ルールで確認してください。

verbatimとsmartは「品質」ではなく目的で選ぶ

公式の音声文字起こしガイドは、2つのモードを次のように説明しています。

モード 公式説明を平たく言うと 向く作業 注意点
verbatim(既定) 発話された語をそのまま返し、フィラー、繰り返し、ポーズ、言い直しを残す。 原音との照合、発言の流れの確認、話者ラベルや単語時刻を使う下地。 読みやすさのための整形ではない。誤りがないことや、話者名が確定することを意味しない。
smart フィラーや言いよどみを除き、言い直しを整理し、段落・番号・箇条書き・日付・通貨・数値などを読みやすく整える。 議事録の下書き、要点を人が確認する前の読みやすい整理。 話者分離・単語時刻とは併用できない。verbatimより正確という意味ではない。

smartは読みやすい下書きを作りたいとき、verbatimは原音をたどりたいとき。これは本稿の判断基準です。公式資料はモードの仕様を説明していますが、smartが常に正確、verbatimが常に優秀、といった性能順位を示してはいません。

話者・時刻・固有名詞を足すときの注意

機能を全部オンにすると便利になる、とは限りません。公式文書には次の制約があります。

  • 話者分離は最大8話者。3人以上の話者帰属はexperimental(実験的)です。出力のspk_1やspk_2を、実在の人名と同一視しません。
  • 単語単位のタイムスタンプは、各単語の開始・終了位置を返しますが、全体の文字起こし精度を低下させる可能性があります。
  • smartはtimestamp_granularitiesやdiarization_modeと併用できません。話者や時刻が必要なら、verbatim側の設定を使います。
  • カスタム語彙は最大1,000語を渡せますが、公式ガイドは最大100語程度で最良の結果になりやすいと説明しています。カスタム語彙は話者分離・単語時刻と併用できません。

つまり、話者・時刻・固有名詞を全部同時に満たそうとする前に、今回の業務で一番大事な確認点を一つ決めます。最初の1分テストで、設定を盛りすぎないことが失敗を減らします。

最初の1件を試す手順

以下は、AI導入初期のチームでも実行単位を小さくできるようにした編集提案です。実施結果を示すものではありません。

1. 架空の練習音声を1分だけ用意する

実際の会議や顧客との通話ではなく、自分で読む台本か、権利と公開範囲が明確な合成音声を使います。例えば次の台本です。

【架空の練習台本】来週火曜日の午後2時に、A商品の説明会を行います。予算は30万円です。担当は山田さんではなく、鈴木さんです。次回までに見積書を作成します。納期は未確定です。

この台本は、名前、金額、日付、時刻、訂正、決定事項、未確定事項を確認するための編集例です。実在企業やMASTER key株式会社の顧客事例、実測結果ではありません。音声ファイルにも、実際の個人情報や秘密を混ぜないでください。

2. 対象環境とモデル名を確認する

公式モデルページにはGoogle AI Studioで試す導線があります。ただし、対象アカウントの画面や利用可否は本稿で確認していません。画面にモデル選択欄が表示される場合に、gemini-3.5-transcribeが選べること、音声ファイルを添付できることを確認します。表示されなければ、そこで保留です。

3. 同じ音声をverbatimで1回目に出す

同じファイルを最初はverbatimで処理します。これは公式ガイド上の既定モードです。話者分離や単語時刻が必要な仕事なら、目的を確認してから追加します。最初から全部を有効にしてしまうと、どの設定が照合を難しくしたのか分からなくなります。

出力は「正式議事録」ではなく「原音照合前の下書き」として扱います。処理時間、認識率、実費は、この手順だけでは測定していません。

4. 同じ音声をsmartで2回目に出す

入力ファイルを変えず、smartで別の出力を作ります。比較するのは優劣ではなく、何が読みやすく整形され、何が原音から追いにくくなったかです。smartでは話者ラベルや単語時刻を同時に取れないため、同じ音声でも設定の違う出力になります。

5. 2つの出力を原音と照合する

次の比較表を試行ログにコピーします。空欄を埋めること自体が目的ではなく、確認できなかった箇所を残すことが目的です。

照合項目 verbatim smart 原音と一致したか/要確認点
人名・製品名・固有名詞
金額・数量・単位
日付・時刻・期限
話者ラベルと実際の発話者
決定事項と単なる提案
次の行動・担当者・期限
聞き取れない箇所・不明点

6. 人が確認するまで下書きで止める

原音と一致しない箇所には、推測で正しい語を入れず「要確認」と残します。確認者が差分を見て、元音声の該当箇所を聞き直します。話者ラベルが付いていても、それだけで人名が確定するわけではありません。

ここまで確認できた後に初めて、社内の正式記録へ移すかを判断します。顧客への連絡、タスク登録、共有先への送信は、通常の承認ルールを通った後です。

目的別の選び方

先に決める業務上の目的 初回の候補 人へ戻すポイント
読みやすい議事録の骨格を作る smart 削除・整理された言いよどみが、発言の意図を変えていないか。日付、金額、期限を原音で確認する。
原音の流れを追い、発言を照合する verbatim フィラーや言い直しを含めて、人名・数字・決定事項を確認する。
誰がいつ話したかを確認する verbatim+話者分離または単語時刻 spkラベルを人名とみなさず、実際の発話者と原音を照合する。
読みやすさと照合材料の両方が必要 verbatimを照合用、smartを下書き用に分ける 同じ音声でも設定が異なるため、2つを混ぜて一つの事実にしない。

最後の行は、本稿の編集判断です。1本の出力にすべてを求めず、「照合する原文」と「読みやすい下書き」を分けると、どこを人が見ればよいかが明確になります。これも精度や業務効果を保証する方法ではありません。

試す・保留・今回の対象外を分ける

判断 条件 次の行動
試す 非機密または合成、権利・同意・公開範囲が明確。対象環境とデータ利用条件を説明でき、1件を確認する人が決まっている。 1分音声をverbatimとsmartで比較し、原音照合ログを残す。
保留 モデルが表示されない、料金やデータ境界が不明、権利・同意が不明、確認者がいない、重要な差分を原音で確かめられない。 音声を投入せず、社内の利用条件・確認者・停止条件を決め直す。
今回の対象外 顧客の実録音、秘密・個人情報を含む音声、本番API連携、自動での顧客連絡・タスク登録、高度なAIエージェント運用。 別の承認・契約・セキュリティ設計が揃うまで、この1分テストには混ぜない。

「Freeだから試す」ではなく、「条件を説明できるから安全側に小さく試せる」が判断軸です。条件を説明できないときに保留することも、AI活用の失敗ではなく、運用を設計するための一手です。

試行ログのテンプレート

実際に試す場合は、結果を成功談に整える前に、次の事実を残します。ログには秘密や個人情報を転載しません。

  • 実施日・対象環境・アカウント条件:
  • 音声の出所:合成/公開範囲確認済み/その他(権利・同意の根拠):
  • 音声の長さ・形式:
  • 使用モデル:gemini-3.5-transcribe/その他:
  • 出力モード:verbatim/smart:
  • 追加設定:話者分離/単語時刻/カスタム語彙/なし:
  • 原音と照合した差分:
  • 確認者と確認日:
  • 正式記録・外部送信へ進めたか:進めない/承認後に進める/保留:
  • 停止条件と次の一手:

このログは、実施した場合にだけ埋めるものです。本稿自体はAI Studioへのログイン、音声の投入、実費・精度・処理時間の計測を行っていません。

まとめ:自立AIの前に、人が戻れる下書きの境界を作る

Gemini 3.5 Transcribeは、日本語の音声ファイルを扱い、verbatimとsmart、話者分離、単語時刻、カスタム語彙といった選択肢を持つモデルです。一方で、選択肢が多いほど最初から本番業務へ接続する理由にはなりません。

AI導入初期の中小企業に必要なのは、モデルの順位を決めることより、入力してよい音声、確認する項目、確認前に止める境界を決めることです。MASTER key株式会社・AX事業部のowned記事として本稿が置く視点も、いきなり自立AIを本番に置くことではありません。音声を下書きへ変え、人が原音と照合し、確認できなければ保留する。この小さな手順を業務の単位にすることです。

まずは架空の1分音声を1件。画面、料金、データ境界を確認し、verbatimとsmartの違いを見ます。そこで分かるのは「使える」と「使えない」の最終結論ではなく、自社の条件を説明できるかどうかです。認識精度、実費、検索需要、業務効果、MASTER keyの顧客成果は、この原稿からは判断できません。

参照元

  1. Google AI for Developers「Release notes」 — 2026年8月26日のGemini 3.5 Transcribe GA記載。2026年9月13日JSTに再確認。
  2. Google AI for Developers「Gemini 3.5 Transcribe」 — モデルID、音声上限、ja-JP、機能と制約。2026年9月13日JSTに再確認。
  3. Google AI for Developers「Audio transcription」 — verbatim/smart、話者分離、単語時刻、カスタム語彙、互換性。2026年9月13日JSTに再確認。
  4. Google AI for Developers「Gemini Developer API pricing」 — Free/Paidの表示、Gemini 3.5 TranscribeのStandard料金、AI Studio導線。2026年9月13日JSTに再確認。

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