生成AIを社内で試すなら、いきなり全社規程を完成させる前に、低リスクな1業務について次の4つを1枚に書く方法があります。

  1. 対象業務と対象外
  2. 入力条件
  3. 人の確認と停止条件
  4. 見直し日と記録

この記事の試行案では、公開情報であっても、用途・利用サービス・社内の入力許可を確認したものだけを入力してよい情報として扱います。Web上に公開されていることだけを、特定のAIサービスへの入力許可とはみなしません。

また、社外の提供者が運営するAIサービスの入力欄へ文章を貼り付けたり、ファイルや画像をアップロードしたりすることは、この記事では外部送信として管理します。出力を草案として止めても、入力時点の送信がなかったことにはなりません。許可やサービスのデータ取扱いが確認できない場合は、入力・共有・登録を止め、人の確認へ戻します。

まず、全社規程ではなく1業務に絞る

全社規程と1業務カードは役割が違います。最初から全社の利用範囲、例外、承認経路を一度に決めようとすると、試行前に論点が広がります。1業務カードは、試行する範囲を狭くし、どこで迷ったかを記録するための小さな判断単位です。

比較 全社規程 1業務カード
対象 社内の複数業務・複数の利用場面 初回に選んだ低リスクの1業務
先に決めること 方針、責任、例外、相談先など 入力、外部送信、確認、停止、見直し
この記事での扱い 完成を目標にしない 試行前に1枚を作る
位置づけ 将来検討する組織的な文書 本稿の編集上の試行案。公的様式ではない

1業務カードは、全社規程の代わりになるものではありません。試行後に迷った項目を残し、次のルール検討へ持ち帰るための記録です。

公開情報と外部送信を分けて考える

公開済みの文章なら無条件にAIサービスへ入力してよい、という考え方は採りません。初回試行では、操作ごとに続行条件を分けます。

操作 本稿での扱い 続行条件
AIサービスの入力欄への貼付、ファイル・画像のアップロード、APIや連携による転送 本稿で外部送信として管理する操作 出所、用途、入力許可、サービスの利用条件・データ取扱いを確認できた場合だけ
AIの出力を取引先やその他の社外の相手へ渡すこと 外部共有。入力とは別の後続操作 宛先、内容、共有許可を別途確認できた場合だけ
AIの出力を正式な社内共有、業務システム登録、権限変更、自動実行へ進めること 試行の終点より後の正式操作 確認者と社内の許可条件を別途確認できた場合だけ
人が確認するために出力を草案として保留すること 初回試行の終点の候補 入力時点の外部送信が許可済みで、確認者と原文が決まっている場合だけ

ここでの外部送信は、法令上の用語やすべての技術構成を説明するものではありません。初回試行の境界を曖昧にしないための、本稿の編集上の運用定義です。

公開情報も、次の確認がなければ入力許可済みとは扱いません。

  • その情報の出所と、今回の業務で使う目的が分かる
  • その用途と利用サービスへの入力を社内で許可した人が分かる
  • 利用サービスの利用規約、プライバシーポリシー、入力データの扱い、機械学習への利用の扱いを確認できる

確認できない場合は、公開情報であっても入力しません。公開されていることと、特定のサービスへ送信してよいことは別の判断です。

1枚に書く4区分

1. 対象業務と対象外

最初に、AIへ何をさせるかを一文で書きます。対象は、入力許可を確認でき、出力がそのまま社外送信・正式な社内共有・業務システム登録につながらない、低リスクの作業から選びます。

  • 対象業務:何を整理、要約、下書きするのか
  • 対象外:顧客対応、採用、評価、契約、価格、医療、金融、与信、安全確保など
  • 初回試行に使わない情報:実在の秘密、顧客情報、個人情報、契約情報、機密文書など
  • 試行の終点:出力を人が確認し、草案として保留するところまで

外部送信、正式共有、業務システムへの書込み、権限変更、自動実行、API連携、AIエージェント運用も、この初回カードの範囲には入れません。

2. 入力条件

この初回試行では、次のいずれかに限定します。

  • 合成データ
  • 入力許可を確認した、短い公開情報
  • 入力許可を確認した、短い社内文書

入力前には、次を確認します。

  1. 元資料の出所と、今回の利用目的が分かるか
  2. その目的と利用サービスへの入力許可を確認できるか
  3. 個人情報、顧客情報、契約情報、秘密・機密情報が含まれていないか。判断できなければ入力しない
  4. 提供者が入力データをどう扱うか、機械学習に利用するか、利用規約・プライバシーポリシーで確認できるか
  5. 出力を誰が確認し、外部共有・正式登録へ進める条件を別に決められるか

個人情報を含む可能性がある場合は、利用目的と入力の必要性、提供者が入力データをどう扱うか、機械学習への利用、利用規約・プライバシーポリシーを確認します。これは、すべてのサービスや案件を一律に適法・不適法と判定するための表ではありません。

3. 人の確認と停止条件

確認者は、原文、社内で許可された資料、あらかじめ決めた条件と出力を照らし合わせます。次のいずれかに当たる場合は、出力を使い続けず停止します。

  • 入力してよい情報か判断できない
  • 今回の用途・サービスへの入力許可が確認できない
  • 利用サービスの扱いや利用条件、機械学習への利用が確認できない
  • 原文や根拠資料に戻れない
  • 確認者が決まっていない
  • 出力に事実・数字・条件の誤りがないか判断できない
  • 外部送信、正式な共有、業務システム登録の条件が不明
  • 高影響の判断へ広げる必要が生じた

停止後は、情報を足したりプロンプトを工夫したりして実行を続けません。外部送信、共有、登録を進めず、判断できる人や社内の相談・事故対応ルートへ戻します。すでに入力した後で許可や扱いが不明だと分かった場合も、出力を転送・登録せず、社内の確認先へ連絡します。

停止条件は安全性を保証する仕組みではなく、判断不能な状態を見逃さないための本稿の運用提案です。

4. 見直し日と記録

試行日だけでなく、次に見直す日を置きます。1件の試行後にうまくいったことを大きく一般化するのではなく、迷った項目と次回に直す箇所だけを残します。

  • 試行日と対象業務
  • 元資料の出所と入力許可の確認結果
  • 利用サービスの利用規約・プライバシーポリシー・学習利用の確認結果
  • 人の確認で迷った箇所
  • 外部送信、共有、登録へ進めなかった理由
  • 次回の修正点と見直し日

そのまま使える1枚テンプレート

以下は、公的な帳票ではなく、初回試行を始めるための編集上のテンプレートです。

1. 対象業務と対象外

  • 対象業務:
  • 対象外:顧客情報、個人情報、秘密・機密文書、高影響判断、外部送信、正式登録、自動実行など
  • 試行の終点:人が出力を確認し、草案として保留するところまで

2. 入力条件

  • 元資料の出所・所有者:
  • 入力してよい情報:合成データ/入力許可を確認した公開情報/入力許可を確認した短い文書
  • 公開されているだけで許可が不明な情報:入力しない
  • 今回の用途・利用サービスへの入力許可の確認者:
  • 利用目的・必要性の確認:
  • 利用サービス・アカウント:
  • 提供者の利用規約・プライバシーポリシー・学習利用・入力データの扱いの確認:

3. 人の確認と停止条件

  • 確認者:
  • 照合する原文・基準:
  • 続行できる条件:
  • 外部送信の扱い:入力欄への貼付・アップロード・API転送も本稿では外部送信として扱う。許可確認前は行わない
  • 外部共有・正式登録の扱い:初回試行の終点に含めず、別に確認する
  • 停止条件:入力許可、サービスの扱い、根拠、確認者、外部送信・正式共有・登録の条件が不明な場合
  • 停止後の戻り先:人の確認、社内の相談・事故対応ルート

4. 見直し日と記録

  • 試行日:
  • 次回見直し日:
  • 入力許可とサービス条件の確認結果:
  • 人の確認で迷った項目:
  • 外部送信・共有・登録へ進めなかった理由:
  • 次回に修正する箇所:
  • 判定:続行/保留/中止

公開情報を入力するときは、公開されているURLや文書名だけでなく、今回の用途と利用サービスへの入力許可を記録します。許可確認の欄が空欄なら、入力を始めません。

実施手順

  1. 1業務を選ぶ:合成データ、または入力許可を確認した短い公開情報・短文書だけで試せる作業に限定します。
  2. 元資料と許可を確認する:出所、用途、入力許可の確認者を決めます。公開済みであることだけを許可の根拠にしません。
  3. 外部送信先の条件を確認する:利用サービスの利用規約、プライバシーポリシー、入力データの扱い、機械学習への利用を確認します。分からなければ入力しません。
  4. カードを先に埋める:対象外、入力条件、外部送信の扱い、確認者、停止条件、見直し日が空欄のままなら開始しません。
  5. 必要な範囲だけを入力する:許可が確認できた情報でも、目的に必要な範囲を超えて追加しません。
  6. 出力を草案として扱う:出力をそのまま共有・送信・登録せず、人が確認する状態で止めます。
  7. 原文と照合する:事実、数字、条件、抜け、根拠の有無を確認します。
  8. 判断できなければ停止する:確認者や根拠が不明なら、人の確認へ戻します。
  9. 共有・登録は別に判断する:社外送信、正式な社内共有、業務システム登録には、初回試行のカードとは別の許可条件を確認します。
  10. 迷った箇所だけ記録する:次回見直し日に、カードのどの欄を直すかを決めます。

記録するのは、AIが便利だったという感想だけではありません。入力許可を決められなかった箇所、サービスの扱いを確認できなかった箇所、原文との照合で止まった箇所、確認者が迷った箇所を残すと、次に整えるべき業務境界が見えます。

仮想例:公開済み製品説明文を社内用の要点に整理する

以下は実在の業務・データではない仮想例です。実際の顧客情報や機密文書を入力する例ではありません。公開済みであることだけで入力を許可する例でもありません。

カード項目 仮想の記入例
対象業務 自社が社外公開した製品説明文を、社内会議用の要点3つに整理する
対象外 顧客の問い合わせ、契約条件、未公開機能、個人情報、営業判断、社外への自動送信
入力条件 公開済みの短い説明文。今回の用途と利用サービスへの入力許可を事業責任者が確認済み。利用サービスの規約・プライバシーポリシー・学習利用の扱いも確認済み
公開情報の扱い 社外公開済みであることは補助情報であり、入力許可そのものではない。許可の確認が取れなければ入力しない
外部送信 AIサービスの入力欄へ貼り付けることを本稿では外部送信として扱う。許可確認前は行わない
確認者 事業責任者。出力を元の説明文と照合する
試行の終点 出力を社内の草案として保留するまで。社外送信、正式共有、業務システム登録は行わない
停止条件 入力許可が不明、サービスの扱いが不明、出力に元文にない機能がある、確認者が不在、次の共有・登録条件が不明
見直し 試行日の7日後に、迷った欄と次回の修正点だけを確認する

この例でも、出力が正しいと自動的に決めるわけではありません。要点が元文に戻れない場合や、次の業務操作へ進む条件が不明な場合は、草案のまま保留します。

公的資料から言えることと、この記事の提案を分ける

資料から確認できること

AI事業者ガイドライン(第1.2版)は、AI利用者に関して、意図した利用範囲、入力データ、出力の正確性とリスク、個人情報・機密情報の扱い、人の判断、定期確認、停止・復旧、ログ確認を検討する観点を扱っています。

個人情報保護委員会の生成AIサービスの利用に関する注意喚起等は、個人情報を含む入力の目的・必要性、提供者による利用や機械学習への利用、利用規約・プライバシーポリシー、生成された内容の不正確さを確認する注意点を示しています。

この記事での推論・提案

上記の論点を、AI導入前の中小企業が1業務で試せるように、対象範囲、入力条件、人の確認と停止条件、見直し日という4区分へ整理しました。公開情報でも用途・サービス・社内許可を確認すること、入力欄への貼付・アップロード・API転送を外部送信として扱うこと、外部共有や正式登録を別の後続操作として扱うことは、判断境界を明確にするための本稿の編集上の提案です。1枚という形式や各欄の組み合わせも、本稿の試行案です。公的資料がこの語義や形式を義務付けているわけではありません。

MASTER key・AX事業部からの考え方

MASTER key株式会社とAX事業部がこの記事で示すのは、AIツールの機能を並べることではなく、業務の入口で判断境界を設計するという考え方です。何を入力してよいか、どのサービスへ送るか、誰が確認するか、どこで止めるか、いつ見直すかを記録できれば、将来のAI運用を考えるときの初期条件を話し合いやすくなります。

これは本記事の発信方針と仮説であり、MASTER keyの顧客成果、認知向上、検索需要、独自性、導入効果を示す実績ではありません。実際の業務へ広げる場合は、社内規程、契約、利用サービスの現行条件、個別のデータ状況、適用される法令を別途確認してください。

この1枚で決められないこと

  • 個人情報保護法、著作権、契約、社内規程、サービス規約の個別適法性
  • 公開情報を特定のサービスへ入力してよいかという個別の許可判断
  • 顧客対応、採用、評価、契約、価格、医療、金融、与信、安全確保などの高影響業務
  • 外部送信、業務システムへの書込み、権限変更、自動実行、API連携、AIエージェント運用
  • 会社全体のAIポリシー、監査要件、認証要件
  • 安全性、正確性、漏えい防止、生産性、導入効果の保証

個人情報や機密情報を扱う必要が出た場合は、この記事の仮想例を拡張して済ませず、目的、必要性、サービスのデータ取扱い、社内の承認・相談先を個別に確認します。個人情報保護委員会の注意喚起は2023年6月2日付であり、実際の利用前には現行の利用規約、プライバシーポリシー、法令、社内ルール、新しい公的資料も再確認してください。

すでに許可が不明な情報を入力してしまった場合は、出力を共有・登録せず、社内の相談・事故対応ルートと利用サービスの現行条件を確認してください。この記事は、送信済みデータの回収、法的評価、個別サービスの対応を判断する手順ではありません。

また、この候補の検索需要や読者の困りごとは直接観測されていません。現時点のGSC・GA4の集計値はチャネル全体の値であり、この記事のURL、検索語、流入、読者反応へ帰属する記事別の成果ではありません。

参照元

  1. AI事業者ガイドライン — 公式掲載ページ。
  2. AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編(概要) — PDF p.23。
  3. AI事業者ガイドライン(第1.2版)別添(溶け込み版) — PDF p.167、p.173。
  4. 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について — 個人情報保護委員会の公式掲載ページ。
  5. 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等 — PDF pp.1-3。