2026.10.05
小さな提案の反論をAIに考えてもらう:仮の声と実際の意見を分ける

AIに自分の案への反論を一つ考えてもらうと、見落としていた条件に気づくきっかけになります。ただし、AIが書いた心配は、同僚や参加者が実際にそう考えている証拠ではありません。
ここでは、架空の社内勉強会の案を使い、反論候補を「提案の文面で答えられること」と「人に確認しないと分からないこと」に分けます。試す作業は、提案の弱い点を一つ見つけるところまでです。
まず、どの条件を確かめたいか一つ決める
例に使うのは、次の説明用の架空案です。実在の会社や参加者の計画・意見を表したものではありません。
社内勉強会の資料を前日に配り、当日はその内容を説明する。
この案について、「前日に配られても、参加前に読む時間がない人がいるかもしれない」という条件だけを考えます。開催方法や資料の内容など、別の論点はいったん増やしません。
AIに渡す前に、手元でも二つだけ書いておきます。
- 案の目的:当日の説明を分かりやすく始められるよう、資料を前日に共有する
- まだ分からないこと:資料を事前に読むことが参加条件なのか、当日初めて見てもよいのか
目的は、AIに案の狙いを取り違えさせないための手がかりです。「まだ分からないこと」は、AIに事実らしく埋めてもらう欄ではありません。
AIには、仮の反論を一つだけ頼む
入力してよい情報か、利用するサービスと社内ルールを先に確認してください。許可が分からない実際の企画書は貼らず、次のような架空の文面で試せます。
次は説明用の架空案です。実際の参加者の発言や調査結果ではありません。
提案:社内勉強会の資料を前日に配り、当日はその内容を説明する。
考える条件:参加前に資料を読む時間が取れない場合。
この条件から考えられる心配を一つだけ挙げてください。
参加者が実際にそう考えているとは断定しないでください。
提案に書かれていない事実や気持ちは補わず、次の順で答えてください。
1. 「もし〜なら」という仮の心配
2. 提案の文面に既に書かれている対応
3. 文面だけでは分からず、人に確認する必要がある点
「もし時間がなければ、予習が必要だと思われて参加しづらいかもしれない」というのは、分類のしかたを示すための仮説例です。実際にAIへ尋ねて得た回答でも、参加者から聞いた意見でもありません。
原案に戻って、三つに分ける
AIの文章をそのまま採用せず、提案の文面と一行ずつ照らします。
| 見るもの | この架空案での扱い |
|---|---|
| 文面で答えられること | 「資料を前日に配る」「当日は内容を説明する」と書かれている |
| 文面にないこと | 事前に読むことが必須か、読めなかった人向けの説明があるかは書かれていない |
| 人に確かめること | 予習なしでも参加できる進め方にするのか、主催者や参加者に確認する |
たとえば、案に「予習は不要で、当日初めて見る人にも説明する」と既に書いてあれば、少なくともその点は文面上で答えています。それでも参加者の反応が分かったわけではありません。反対に、案にない条件をAIが補ったときは、「参加者の不満」ではなく「確認候補」として残します。
実際の意見が必要なら、AIの出力を誰かの発言のように引用せず、対象の人へ一つだけ中立に尋ねます。例なら「事前に資料を読まない場合でも参加しやすい進め方になっていますか。必要な準備があれば教えてください」のように、答えを決めつけない聞き方にします。
使い続ける前に、出力を確認する
返答を見たら、次を順に確認します。
- 反論が一つに絞られているか:別の課題まで増えていたら、今回の条件に関係する一つだけを残します。
- 案のどこに基づくか分かるか:元の文面にない事実や人の気持ちは、事実として使わず「要確認」にします。
- 自分で直せることか、人に聞くことか:案内の書き方なら提案者が直せます。実際の都合や希望は、関係する人に確かめます。
- 次の一歩が一つに定まったか:今回は「予習なしでも参加できる進め方かを確認する」のように、一点を選んで終えます。
返答を読み直しても出どころが分からない場合は、無理に採用しなくて構いません。AIに同じ条件を何度も尋ねて多数決にするのではなく、提案の文面か、確認できる人へ戻ります。
入力してはいけない情報
氏名、連絡先、個人の事情、未公開の社内計画、顧客情報、契約、認証情報、営業秘密は入力しません。匿名化したつもりでも、文脈や細かな条件から個人・案件が分かることがあります。利用サービスへの入力許可が不明な場合は、実際の資料を使わず、上のような架空例にとどめてください。
採用、人事評価、契約、価格、健康、安全など、人に重大な影響がある判断の「反対意見づくり」には、この試し方を使わず、責任者や定められた確認先に戻します。
根拠と、この方法で言えないこと
米国国立標準技術研究所(NIST)の生成AIリスク資料は、生成AIが誤った内容を自信ありげに示す現象を「confabulation」と説明し、出力が入力から逸れたり、同じ文脈内で矛盾したりする場合も挙げています。したがって、AIが考えた反論を実際の相手の意見や調査結果として扱わず、提案に照らして確認する、というのが本稿の実務上の提案です。NIST資料がこの具体的な手順を定めているわけではありません。
参照:NIST, Artificial Intelligence Risk Management Framework: Generative Artificial Intelligence Profile, NIST AI 600-1, 2024, §2.2, pp. 9–10. 原文(PDF)(2026年10月5日確認)
ここで紹介した依頼文や確認の分け方は、考えを整理するための記事上の提案です。AIの反論が正しいか、実際の人の考えを予測できるか、提案や勉強会の効果が上がるかを実測したものではありません。まずは許可された架空の案で一度試し、確認できたことだけを元の案に反映してください。


