2026.10.04
AIへの依頼が両立しないとき、先に決めること

「必要な情報は全部残して、できるだけ短く」と頼んでも、思った形にならないことがあります。情報を全部残したままでは希望の文字数に届かなかったり、無理に縮めると日時や対象者まで読みにくくなったりするからです。
このとき、指示を足し続ける前に、どの条件を優先するか決めてみましょう。ここでは、社内のお知らせを短くする一作業に絞って、AIに競合を指摘させ、人が優先順位を伝え直す方法を紹介します。
「必ず残す」と「調整できる」を分ける
たとえば、お知らせ文を短くしたいとします。依頼には、守る条件と希望する条件が混ざっています。
| 種類 | この例での条件 |
|---|---|
| 必ず残す | 開催日時、場所、対象者、申込期限 |
| 調整できる | 文章の言い回し、あいさつ、資料を配る案内 |
| 希望 | お知らせ全体を50字以内にする |
申込方法を消すと困るなら、それも「必ず残す」に加えます。何を残すかは、元の案内を知っている人が決めます。AIに優先順位まで任せないのがポイントです。
まず「両立できるか」を聞く
実際の社内文書を試す前に、次のような架空のお知らせで流れを確かめられます。会社で使うことを認められたAIを選び、入力ルールも確認してください。
新しい勤怠システムの説明会は11月5日15時から本社2階会議室で開催します。対象は新システムを使う営業部・管理部のメンバーです。申込は社内ポータルから10月30日17時まで。資料は当日配布します。
最初から書き直しを頼まず、競合の有無だけを聞きます。
この案内全体を50字以内にしてください。
開催日時・場所・対象者・申込期限は必ず残してください。
まず本文は書き換えず、この条件が両立するかを確認してください。
難しい場合は、短くするために省くことになりそうな情報と、
別の欄に移せる情報を挙げてください。事実は補わないでください。
返答では、どの情報を削る案になっているかを見ます。「資料は当日配布」を省く案が出たら、それが許されるかを判断します。日時や期限を短縮表記にする案なら、読む人が誤解しないかも確認しましょう。返答の形だけで、条件が本当に満たされたとは判断しません。
優先する条件を決めて、頼み直す
この例では、開催日時・場所・対象者・申込期限を残す方を優先し、50字以内という希望を70字まで緩めることにします。「資料は当日配布」は必須条件に含めていないので、短い案内からはいったん外します。必要な情報として残したい場合は、必須条件に追加して考え直してください。
開催日時・場所・対象者・申込期限は省略しないでください。
全体を70字以内にし、資料を配る案内は外して構いません。
次の架空文を短くしてください。
書き換え後に、必須の4項目がそれぞれどこに書かれているか示してください。
元の文にない情報は足さないでください。
たとえば、次のような案が考えられます。
勤怠システム説明会は11/5 15時、本社2階会議室。対象は新システム利用の営業部・管理部。申込は社内ポータルから10/30 17時まで。
この文は69字です。元の架空文と比べると、日時、場所、対象、申込期限は残っています。「資料は当日配布」は指定したとおり省いています。AIが示す確認リストだけで済ませず、元の案内と一項目ずつ見比べてください。
50字以内が譲れない場合は、条件を勝手に落とすのではなく、本文と補足欄を分ける、別の掲示場所に詳細を載せるなどの案を検討できます。分けてよいか、どこに何を載せるかは、案内の責任者に確認して決めます。
共有前に確認する
生成AIは、依頼や入力と食い違う内容を、もっともらしく返すことがあります。NISTはこの種の誤った内容や入力から逸脱した出力を生成AIのリスクとして説明し、OpenAIもChatGPTの回答が誤ったり、確信があるように見えても間違ったりする場合があると案内しています。そこで、次の確認を人が行います。NISTの生成AIプロファイル、OpenAI Help Center
- 必須にした日時・場所・対象者・期限を、元の案内と照合する。
- 省いた情報が本当に任意だったかを確かめる。
- 短くした結果、対象者や申込方法が分かりにくくなっていないか読む。
- 期限や社内ルールなど、間違うと困る項目は、案内を管理する人にも確認する。
この進め方は、条件がぶつかったときに人が優先順位を選ぶための実務上の工夫です。すべての依頼が短く収まることや、AIの回答が正確であることを保証するものではありません。社外に出す案内や、期限・制度の解釈が関わる文書は、変更する前に担当者へ確認してください。
入力してよい情報も先に確認する
練習には、上のような架空の文章を使えます。実務で試す場合は、会社が利用を認めたサービスか、入力内容に関する社内ルールを確認します。顧客や従業員の個人情報、未公開の社内資料、案件の秘密、パスワードや認証コードは入力しないでください。必要なら、固有名詞や数字を一般化した文に置き換えます。
今日できる小さな一歩
自分が短くしたい文章を一つ選び、AIに渡す前に「必ず残す条件」と「調整できる条件」を一つずつ書き分けてみましょう。どちらを優先するか決めてから、まずは架空の文章で頼み方を試せます。
参考資料(2026年10月4日確認):NIST, Artificial Intelligence Risk Management Framework: Generative Artificial Intelligence Profile(2024年);OpenAI Help Center, “Does ChatGPT tell the truth?”(最終更新表示を確認)。


